妄想おじさん ~ 第二部 浪人編 ~
41歳の夏を迎えたおじさんは、徹夜作業明けの早朝にうとうとしながら、なぜか
昔の自分を思い出していた。
あれ?デジャヴ?
いや、こないだの続きだ…
なんて都合のよい身体、いや脳。
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大学受験に失敗した私は、変人指向の彼女にも振られ、一人暮らしの浪人生活に突入する。
当然ながら、生活費を稼ぐ必要があるので、アルバイトを始める。
そこで無謀にも選んだのが、接客業であるコンビニエンスストアの夜勤。
良く通っていたコンビニの店長さんからスカウトされたのだが、もし彼女が当時の私の状況
を知っていたならば声はかけられていないだろう。
いわれるがままに翌日面接、即勤務となる。
しかも、AM2:00からAM8:00までの間はひとり勤務というシフトである。
AM2:00までは先輩がつくがそれからひとり。
今考えれば、絶望的…
なのだが、不思議なことに店員としてなら喋ることができるのである。
店内に誰もいないときはマニュアルを読んで学習し、
取り急ぎの接客時は自分がコンビニを利用していた時に使われていたフレーズを思い出し
応対する。
全く問題ない。
むしろ、当時言葉を失っていた私にとってアルバイト先のコンビニは、カラオケと同じくらい
に発声するという快感を得る場になっていった。
歌詞をなぞるカラオケと違い、接客は良い感じでアドリブが必要で、考えたがりの私の思考欲
を適度に満たしてくれた。
お客さんとも雑談ができるようになり、気に入って常連さんになってくれる人もいた。
無駄口ばかりでうざい小学生時代だったが、それなりに人気者だったことを思いだした。
調子に乗った私は、掛け持ちでアルバイトを始める。
コンビニの夜勤を軸に、ゲームケンタ―店員、喫茶店で有閑マダムの接客、仕出し弁当の
調理、クリーニング屋の新規オープン、引っ越し業者。
当時の睡眠時間を考えると恐ろしい。
一つ一つ思い出すと長くなりそうなのでやめる。
どこでもそれなりに人気者になれた。
しかし、予備校では言葉が出ない。
何を話してよいかわからない。
店員とお客さんという関係性が前提であれば喋ることができるのに、友人…いや、友人ですら
ないただ同じ空間にいる他人と何を話していいかわからないし、
そもそも話したいと思うこともなかった。
何かを伝えようと思っても、伝える手段である言葉を紡ぎ始めると、頭の中でダメ出しが
始まる状況は高校時代と何も変わっていなかった。
通う頻度も少なくなっていった。
そんな暮らしを1年ほど続ける。
実家を家出同然に出て一人暮らしを始めたばかりの部屋には、ベッド代わりのソファーが
あるだけだった。
まだ続きます。
また徹夜明けのうとうとした早朝に都合よく昔を思い出すでしょう。
おやすみなさい。
おやすみなさい・・・って、また終わっちゃいましたょ(;´∀`)
第二部ってことは、次は第三部、こちら連載モノだったようですw
では次回もお楽しみに♪