雑食のすすめ
はじめに
こんにちは、キャッチアップ、エンジニアの菅原巧太です。
私は新しい経験や知識を得ることが大好きです。
言い換えれば、好奇心旺盛と言えますが、時には「飽き性」とも捉えられることがあります。
確かに、ひとつのことに集中せず興味が散漫になりがちな性質は、学習や仕事においてネガティブに評価されることもあるでしょう。
しかし、少し視点を変えてみると、飽き性にもポジティブな一面があると思うのです。
人間は進化の過程で、多様な食物を取り入れられる「雑食性」を持つことで、さまざまな環境に適応してきました。
食事と同じように、知識や経験を雑食的に取り入れることは、柔軟性や適応力を高める可能性を秘めているのではないでしょうか。
こちらのブログ記事では、最近読んだ本から得た知識を交えながら、雑食的な生き方や思考の魅力についてお話ししたいと思います。
もしあなたも「飽き性かも」と感じることがあるなら、この視点が新しい気づきにつながれば嬉しいです。
教育学より
「教えることができた」とは?
教育学には「教えの包含テーゼ」という興味深い概念があります。
この考え方は、「教える」という行為が二つの異なる意味を持つことを示しています。
【A】教えたことが、相手の学習を引き起こす
・教師が「私は教えた」と言うとき、それは教える行為によって相手が学びを得た、つまり期待していた学習が引き起こされたという意味です。
【B】教えること自体が努力として認められる
・一方で、たとえ学習が引き起こされなかったとしても、教えるために努力した事実そのものが重要であり、これも「私は教えた」と捉えることができます。
教育学者・宮寺晃夫は前者を「教えの包含テーゼ」と呼び、また後者を「教えの非包含テーゼ」と呼んでいます。
この考え方は、教育の枠を超え、日常生活や仕事の中でも多くの示唆を与えてくれます。
応用して考えてみましょう!
▶︎『メンバーが指示通りに動いてくれない、、』
「指示をした」つもりでも、相手が意図を理解していなければ、実際には「指示をしていない」のと同じ結果になることがあります。ただ指示を出すだけでなく、相手が理解し、行動できるよう支援する姿勢が必要です。(教育学 × マネジメント)
▶︎『先輩にあいさつしたけど、聞こえていなかったようで無視された、、』
「挨拶をした」と感じていても、相手に届いていなければ、それは挨拶が成立したとは言えません。挨拶は「言う」ことよりも「伝える」ことが大切。目を見て明るい声で話しかけるだけで、受け取る側の印象は大きく変わります。(教育学 × 礼儀作法)
▶︎『お客さんが来るので、見えるところだけ綺麗にしといた』
自分が「片付けた」と思っても、相手が「綺麗」と感じなければ意味がありません。相手視点に立ち、根本的に整理整頓されているかを考えることが、片付けの本質を捉えるポイントです。(教育学 × 家事)
このように、「教えた」という行為には、相手がそれをどう受け取ったか、実際に学びが起きたかという結果が伴います。
仕事や日常の中で「伝わること」「相手ができるようになること」を意識することで、ただの行動がより意味のあるものに変わります。
ぜひ、日々のコミュニケーションや指導の中で、「教える」という行為を、相手の視点から考えてみてください。小さな変化が、より良い結果につながるかもしれません。
近代兵器より
戦争中に開発された「爆薬ラット」から学ぶこと
第二次世界大戦中、イギリス特殊部隊が開発した「爆薬ラット」という興味深い兵器があります。
当初は冬場で、ネズミの死体があったとときに暖炉に入れて燃やしてしまうのはよくあることでした。
イギリスはこのありふれた行動に注目し、ネズミの死骸に爆薬を仕込んだ兵器を作りました。
これは、敵軍がネズミの死骸を処理する際に爆発を引き起こす仕掛けです。
結果としてこの作戦は事前に発覚して実行されませんでしたが、敵軍に不要な警戒心を植え付け、大きな労力を割かせるという間接的な効果をもたらしました。このエピソードから学べるのは、「相手の行動を予測し、その行動を利用して目標を達成する」という戦略的な発想です。
では、この発想を私たちの日常や職場でどのように活用できるでしょうか?
応用して考えてみましょう!
▶︎「片付け」を自然にしてもらう工夫
たとえば、家や職場で誰かに片付けをしてほしいとき、あえて「片付けが必要だ」と感じる状況を作ることで、相手が自主的に動くように仕向けることができます。
例: ゴミ箱が満杯になりそうなところにわかりやすく「ゴミ袋交換はこちら」と新しいゴミ袋を置いておくと、誰かが気づいて交換してくれる可能性が高まります。
▶︎「書類や道具を元の場所に戻してもらう」仕掛け
職場で共有物が片付かない場合は、戻す行動を自然に促す工夫が効果的です。
例: 書類の収納場所に「戻してくれてありがとう!」のメッセージを貼ると、相手が心理的に行動を促されやすくなります。行動を促すメッセージや視覚的ヒントを加えることで、相手の自主的な行動を引き出せます。
▶︎「報告を自然にさせる」仕掛け
チームメンバーに日報や進捗報告をしてほしい場合、相手の行動に自然と組み込む仕掛けを考えます。
例: チームメンバーが使うチャットツールやタスク管理ツールに、報告を記入する欄をあらかじめ目立つ位置に配置しておくと、意識せずに入力しやすくなります。
「爆薬ラット」のような戦略は、相手の自然な行動を予測し、その流れにうまく乗せることで目的を達成するという考え方です。何かを「やらせる」のではなく、「やりたくなる」「ついやってしまう」状況を作ることで、よりスムーズに目標を達成できます。
ぜひ日常生活や職場の中で、「相手の行動を予測し、それを活かした仕掛けを作る」という視点を取り入れてみてください。その小さな工夫が、大きな成果を生むきっかけになるかもしれません。
ランドスケープアーキテクトより
地域を変える「はみだしのデザイン思考」から学ぶこと
「地域を変えるランドスケープ」という本では、“はみだし”というユニークな設計思考が紹介されています。この考え方は、住民が「自分ごと」として地域に関わり、時間をかけて場を育てていくことを目的としています。
特に印象的なのは、「完成を急がず、段階的に場所をつくる」というアプローチです。例えば、最初に一部だけ完成させ、それを使ってもらいながら、住民のフィードバックを得て次の計画を進めるというプロセス。このようにして、場の使い方や課題が明確になるだけでなく、住民自身がその場を「自分ごと」として捉えるきっかけを生むのです。
この”はみだす”という考え方は、地域づくりだけに限らず、私たちの日常生活や職場でも応用できるのではないでしょうか。
応用して考えてみましょう!
▶︎ コミュニティの中で「役割」をはみ出させる
地域や職場の中で、自分の役割を限定せずに枠を超えることで、新しい関係性や価値が生まれます。
例)
・会社では営業職の人が、イベント時には写真撮影を担当するなど、普段の業務を超えた活動を行う。
・他部署の課題に自発的に関与し、異なる視点から解決策を提案する。
こうした「役割のはみだし」によって、意外な一面が共有され、同僚や関係者との信頼が深まります。
▶︎ プライベートに「職場での学び」をはみ出させる
職場で得たスキルや学びをプライベートの場に活かすことで、新しい価値を生み出せます。
例)
・職場で身につけたプレゼンテーションスキルを、子どもの学校イベントでの発表に活用する。
・チームビルディングやファシリテーションの経験を地元のコミュニティ活動に取り入れ、スムーズな運営をサポートする。
仕事の枠を超えた場でスキルを活かすことで、自分の意外な可能性に気づけるかもしれません。
▶︎ 職場に「プライベート」をはみ出させる
職場に適度なプライベートの要素を取り入れることで、人間関係がより豊かになることがあります。
例)
・チームメンバーと趣味や休日の話題を共有することで、コミュニケーションが円滑になる。
・仕事の場に家族や友人の視点を取り入れて、意外なヒントを得る。
プライベートを少しだけ持ち込むことで、職場がより人間味あふれる場になるかもしれません。
「はみだしの設計思考」は、既存の枠組みを超えて新しいつながりや価値を生むことを目指す考え方です。仕事やプライベート、コミュニティなど、あらゆる場面でこの発想を取り入れることで、思わぬ成果や充実感を得られるでしょう。
新しい発想が生まれる余白を意識し、「自分ごと」として関わる仕組みを作ることで、より豊かなコミュニティや空間を育むことができます。ぜひ、あなたの日常や職場でもこの「はみだし」の考え方を実践してみてください。
偉人たちの雑食性
ご存知の方も多いかもしれませんが、歴史上の偉人たちの多くは、1つの分野にとどまらず、多分野にまたがる知識を持っていました。彼らが独自のアイデアや偉業を生み出せたのは、多様な分野への探究心と知識の「雑食性」が、創造力を引き出す原動力になっていたからです。これを知ると、自分の興味が広く散らばっていることも悪いことではないと思えてきます。
いくつか具体的な例をご紹介しますが、これをきっかけに他にも興味を持って調べてみると、きっと面白い発見があるはずです。
① レオナルド・ダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチは「万能の天才」と呼ばれるほど、さまざまな分野に精通していました。芸術家としてだけでなく、解剖学や物理学、工学などの知識を持ち、それらを相互に応用していました。例えば、『モナ・リザ』のリアルな表現は、解剖学の深い研究があったからこそ実現できたと言われています。彼の創造力は、幅広い知識と好奇心から生まれたのです。
②アイザック・ニュートン
ニュートンといえば物理学の「万有引力の法則」で有名ですが、それだけではありません。彼は数学、哲学、さらには錬金術にも精通し、それらがすべてつながることで、画期的な発見を生み出しました。一見バラバラに思える分野への探究心が、ニュートンの発想力を支えていたのです。
③スティーブ・ジョブズ
現代に目を向けると、スティーブ・ジョブズもまた「雑食性」の魅力を体現した人物です。彼はテクノロジーだけでなく、デザインや美学、さらにはカリグラフィ(西洋書道)などにも深い興味を持っていました。こうした多様な分野への探究心が、シンプルかつ美しいApple製品の誕生につながったのです。彼自身も「点と点が後でつながる」と語っていますが、それはまさに雑食的な知識がもたらす価値を示していると思います。
おわりに
横断的な知識を持つことは、新しい視点を得たり、より良い解決策を生み出す大きなきっかけになります。さまざまな分野の知識を組み合わせることで、従来の枠にとらわれない独自の切り口で物事を見られるようになるのです。
ただし、ここで難しいのは「バランス」です。幅広い知識を持とうとすると、つい浅く広くなりがちです。しかし、浅すぎる知識では応用できるほど抽象化が難しく、せっかくの雑食性が生かせないこともあります。雑食的でありながら、一定の忍耐を持って深掘りすることが重要です。これがなかなか難しいですよね。
私たちも、好奇心の赴くままに興味を広げることを恐れず、学んだことをどう結びつけられるかを考えてみると、思いがけない発見や成長につながるかもしれません。興味の種をたくさん蒔いて、自分だけの「点と点をつなぐ」プロセスを楽しんでみましょう!
AUTHOR
菅原 巧太 アシスタントエンジニア
宮城出身の大学生です。
現在は休学中で、自分の成長に繋がるような実務的な学びを得たいと思い、様々な業種の長期インターンに挑戦しています。
趣味は読書です。
月に10冊から最高100冊くらい読んだこともあるくらい読書が好きです。
将来は自分の部屋に書斎を作って猫とのんびり余生を過ごしたいと思っています。
自分の当たり前を壊してくれて、一歩俯瞰して世界を見れるようになれることが読書の醍醐味の一つだと思うので、生活に刺激が足りないと感じている方に読書をお勧めしたいです。
これから成長という点にフォーカスしていろいろなことに挑戦していきたいと思っております。
どうぞよろしくお願い致します。